裸地化した頂上大地(昭和60年代)
頂上大地を削る浸食溝
年々増加する登山者に踏み荒らされたことから、大山山頂は昭和50年代から急激に緑が減少してしまい、その結果、山肌の保水力が失われ、雨水による浸食溝がいたる所にできてしまいました。
大山の山頂に何とか緑を取り戻そうと、昭和60年地元の自然保護団体、山岳関係者、行政などが手を取り合って保護運動に取り組もうと『大山の頂上を保護する会』が結成され、『一木一石運動』が始まりました。
これは、大山から崩落した石を、登山者に一人ひとつずつ持って山頂に登ってもらい、その石で浸食溝を埋めたり、植物の苗を植え、コモをかぶせて保護したり、木道を整備して踏み荒らされないようにすることで、一度失われてしまった緑を復活させ、大山の山頂を崩落の危機から守っていこうという取り組みです。
「山は崩れるのが自然の摂理」という説もありますが、大山を荒らしてしまったのは他ならぬ人間です。
人間の手によって壊された自然を何とか人間の手によって取り戻したい…。
雄大で自然溢れる大山を次の時代へとつなげていきたい…。
活動を始めて約25年、関係者の願いが少しずつ実を結び、大山山頂には緑が戻りつつあります。
しかし一方で、せっかくのコモをレジャーシートがわりに使ったり、立ち入り禁止のロープを越えて苗木を踏み荒らしたりと、心ない登山者が後を絶たないという悲しい現状もあります。
「せっかく大山に登ったのだから、三角点まで行ってみたい」
それは、登山者なら誰もが願うことです。
一木一石運動を続ける「大山の山頂を保護する会」も、いずれは三角点までの通行禁止を解除したいという思いでいます。
しかし、今、立ち入り禁止のロープを越えて三角点に行くことは、せっかく蘇りつつある山頂の緑を再び失わせ、25年続いてきた地元のみなさんの地道な活動を、文字通り土足で踏みにじる行為であるということを、覚えておいていただきたいと思います。
大山を、登山を、そして自然を愛する皆さんの力で、ぜひ大山を守ってください。